写真と言葉森山 大道

Works and Words by DAIDO MORIYAMA

優れた写真家というだけでなく優れた文章家であり語り手でもある森山大道氏。
このページは黒と白カレーのパッケージになったもとの写真と、印刷媒体を通じてこれまでに発表された森山氏の文章や言葉の一部を抜粋して再構成したものです。

海は風が強く、突如日照雨がパラパラと降った。雨はすぐ止み、ますます風が強く吹きつのって、辺りいちめんもうもうたる砂煙りに、砂丘も防風柵も人も民家も、みな一様に白く染め上げられてしまった。砂丘の向こうに、かつてはなかった大きな和風造りの建物が出来て、市の保養センター〈石狩温泉・番屋の湯〉というわけで、多くの浴客で混み合っていた。ぼくとしては入らないという理由もないので、早速タオルを買って塩分を含んだ湯に浸かった。広いガラス張りの外の、露天風呂の目の前には日本海に続く石狩湾が拡がり、左の彼方にかすむ高島岬の手前の山すそには小樽の町がかすかに煙り見えた。“札幌”より

出典:フォト・エッセイ集『犬の記憶 終章』朝日新聞社(1998/8/1)p.h181
初出:週刊「アサヒグラフ」朝日新聞社1997年の連載 ”犬の記憶 終章”

Text and Photo by DAIDO MORIYAMA
©DAIDO MORIYAMA PHOTO FOUNDATION

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