写真と言葉森山 大道

Works and Words by DAIDO MORIYAMA

優れた写真家というだけでなく優れた文章家であり語り手でもある森山大道氏。
このページは黒と白カレーのパッケージになったもとの写真と、印刷媒体を通じてこれまでに発表された森山氏の文章や言葉の一部を抜粋して再構成したものです。

僕の写真は、僕個人の日常の周辺に生起するこまごまとした事象をしか対象としないので、というよりもそこにしか興味が向かないので、僕の密着焼き(コンタクト)はちょうど日記と同じなのだ。それはパリに行ったところで変わりようもなくて、東京にいてパリにいて、あるいはほかの場所にいて、僕はメモを取るように、スケッチを描くように、きわめて恣意的にさまざまなイメージの断片をとりあえずカメラで収拾する。とりとめのない日々の時間と頼りなく不確かな生の流れに、ほんのいくばくかの申し立てをしてみたくて、僕はカメラを手にしているようなところがある。それは結局、誰に対してというのではなく、抜きさしならない自身の生に向けてのことだろうという気がしている。

出典:フォト・エッセイ集『過去はいつも新しく、未来はつねに懐かしい』青弓社(2000/5/31)p.258
初出:季刊「文藝」河出書房新社 1989年春号/夏号/秋号/冬号の連載 “二都物語”

Text and Photo by DAIDO MORIYAMA
©DAIDO MORIYAMA PHOTO FOUNDATION

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