森山 大道Daido Moriyama

ストリートスナップの名手として世界に知られる日本を代表する写真家

1938年大阪府生まれ。本名:ひろみち
商業デザイナーから転身し写真家・岩宮武二(1920-1989)、細江英公(1933-)のアシスタントを務めたのち25歳でフリーのカメラマンとなる。カメラ雑誌を中心に寄稿を始め、寺山修司氏(’35-’83)の依頼を受けた芝居小屋での撮影がきっかけとなった「カメラ毎日」誌の連載などが評価され、’67年に日本写真批評家協会新人賞を受賞。翌年、未発表作も交え自ら再構成した最初の写真集『にっぽん劇場写真帖』を発表し注目を集める。
批評家・多木浩二(1928-2011)、写真家・中平卓馬(1938-2015)らの写真同人誌「PROVOKE」に’69年の第2号から参加。「アサヒカメラ」誌では、社会的な事件や事故などを題材にテレビ映像や新聞、雑誌の複写を大胆に取り入れた『アクシデント』と題する連載を始める。荒々しいフレーミング、画面が「ブレボケ」「ボケボケ写真」などと呼ばれセンセーショナルに取り上げられるのをよそに、写真にまつわる既定の文脈に疑念を抱き「写真とは何か」「なぜ写真を撮るのか」と問い続け、’72年、写真の通念を覆す写真集『写真よさようなら』を発表する。しかし、その先鋭的な試みも当時は殆ど理解されずに終わる。
その後、作品発表の場を雑誌から展覧会形式へとシフト、自ら個展を企画し、グループ展にも参加するようになる。また、写真家・東松照明(1930-2012)を中心に開設された「WORKSHOP寫眞學校」や「東京写真専門学校」(現・東京ビジュアルアーツ)の講師を務め、前者が’76年に解散すると「生徒に必要なのは発表の場」「教育よりも実践を重視したい」と考え、セミナーや展示のためのスペース「IMAGE SHOP CAMP」を自ら創設する。
’81年、7月に創刊した「写真時代」誌に連載『光と影』を発表、以後同誌が’88年に休刊となるまで『東京』、『仲治への旅』など6つの連載を寄稿する。’82年の写真集『光と影』により日本写真協会年度賞を受賞、’84年には自伝的エッセイ『犬の記憶』(’97年『犬の記憶 終章』)が朝日新聞社より刊行される。
’93年、ファッションブランド・ヒステリックグラマーの依頼により写真集『Daido hysteric no.4』(’94年『Daido hysteric no.6』、’97年『Daido hysteric no.8』)を制作、300頁を超える大判ソフトカバーの写真集は大きな話題となり、以降、写真界だけでなくジャンル、世代を越えて幅広い支持を集めて行く。
’99年、初の回顧展「daido MORIYAMA: stray dog」がサンフランシスコ近代美術館、メトロポリタン美術館ほかアメリカ、スイス、ドイツで開催される。国内では’03年に「光の狩人 森山大道1965-2003」展が島根県立美術館、北海道立釧路芸術館、川崎市民ミュージアムで巡回開催、2023年の現在に至るまで日本、世界の各地で大規模な個展が開催されている。
2018年にフランス芸術文化勲章シュヴァリエを受勲。’19年には写真界のノーベル賞といわれるハッセルブラッド財団国際写真賞を受賞。’21年1月、学術、芸術などの分野で傑出した業績をあげた人物に贈られる朝日賞(主催:朝日新聞文化財団)を受賞する。
2023年は昨年からブラジル・サンパウロで始まった「Daido Moriyama UMA RETROSPECTIVA」展が’EU域内を巡回予定、日本では4月に島根県立美術館で「森山大道 光の記憶」展を、7月に神奈川県立近代美術館の葉山館で「挑発関係=中平卓馬×森山大道」展を開催予定。


森山大道さんをもっと知りたい方にオススメの本
河出文庫『犬の記憶』河出書房新社
河出文庫『犬の記憶 最終章』河出書房新社
別冊太陽『森山大道 写真とは記憶である』平凡社

町口 覚Satoshi Machiguchi

造本家、グラフィックデザイナー、パブリッシャー。

1971年東京都生まれ。
デザイン事務所「マッチアンドカンパニー」主宰。日本を代表する写真家たちの写真集の編集と造本設計、雑誌のエディトリアルデザイン、映画・演劇・展覧会のグラフィックデザインなど幅広く手掛ける。2005年、自ら写真集を出版・流通させることに挑戦するため、写真集レーベル「M」を立ち上げると同時に、写真集販売会社「bookshop M」を設立。2008年から世界最大級の写真フェア「PARIS PHOTO」に出展を続け、世界を視野に日本の写真集の可能性を追求すると同時に、日本の優れた紙・印刷・製本の技術を世界に伝える責務を全うしている。造本装幀コンクール経済産業大臣賞/日本書籍出版協会理事長賞、東京TDC賞など国内外の受賞多数。

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